売却の仲介会社の選び方——媒介契約と囲い込みの注意
仲介会社選びは、媒介契約の種類と「囲い込み」の仕組みを知っておくと落ち着いて比べられます。一般・専任・専属専任の違いと、査定額の高さだけで選ばない中立の比較軸を整理します(特定の会社を勧めるものではありません)。
この記事の位置づけ(中立の比較軸)
不動産の売却では、どの仲介会社に依頼するかで、販売の進め方や物件情報の広がり方が変わります。ただし「どの会社が一番良いか」に一律の正解はなく、物件・エリア・売り方によって向き不向きが変わります。この記事は、特定の仲介会社を勧めるものではなく、会社を比べる前に知っておきたい「媒介契約の種類」と「囲い込み」の仕組みを中立に整理し、確認の観点をまとめるものです(本記事は参考情報であり、投資助言ではありません)。
媒介契約の類型やレインズ(指定流通機構)への登録などの制度は、宅地建物取引業法で定められています。以下では制度の一般的な説明にとどめ、契約の個別の判断や法的な細部は、宅地建物取引士や弁護士などの専門家にご確認ください。
仲介の依頼は「媒介契約」——3つの類型
仲介会社に売却を依頼するときに結ぶのが「媒介契約」で、宅地建物取引業法では大きく3つの類型が定められています——一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約です(宅地建物取引業法 第34条の2ほか)。
違いの主なポイントは、複数の会社に同時に依頼できるか、自分で見つけた買主と直接取引できるか、レインズへの登録義務があるか、依頼者への報告がどのくらいの頻度で行われるか、の4点です。どれが優れているという性質のものではなく、売主の状況に応じて使い分ける前提の制度です。
3種類の違い(参考整理)
3つの媒介契約の主な違いを項目ごとに並べると、次のとおりです(公益財団法人 東日本不動産流通機構〈東日本レインズ〉の媒介契約制度の説明に基づく参考整理、2026-07-17 確認 https://www.reins.or.jp/contract/ )。
| 項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 依頼できる会社の数 | 複数社に同時に依頼できる | 1社のみ | 1社のみ |
| 自分で見つけた買主との直接取引 | できる | できる | できない(仲介会社を通す) |
| レインズへの登録義務 | 義務なし(任意で登録は可能) | 契約日の翌日から7日以内(休業日を除く) | 契約日の翌日から5日以内(休業日を除く) |
| 依頼者への業務報告 | 法律上の義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 契約の有効期間 | 法律上の制限なし(標準約款では3か月が目安とされる) | 3か月以内 | 3か月以内 |
登録期限と報告頻度の読み方
レインズへの登録期限(専任7日以内・専属専任5日以内)は「契約締結日の翌日から」起算し、会社やレインズの休業日を除いて数えます。窓口を1社に絞る専任・専属専任では登録が義務づけられている一方、複数社に同時依頼できる一般媒介では登録は義務ではありません(任意での登録は可能です)。
報告頻度は、依頼者が販売状況を把握できるようにするための仕組みです。1社に絞るぶん報告の頻度が高く定められている、と整理すると分かりやすいでしょう。窓口を1社に絞るか複数に広げるかは、それぞれに考え方があり、一律の優劣はありません。
レインズ(指定流通機構)とは
レインズ(REINS)は、国土交通大臣が指定した不動産流通機構が運営する、不動産会社間で物件情報を共有するネットワークです。ある会社がレインズに物件を登録すると、他の会社もその情報を見て買主を探せるため、物件情報が広く行き渡りやすくなります。
専任媒介・専属専任媒介で登録が義務づけられているのは、窓口を1社に絞るぶん、情報が閉じてしまわないよう物件を広く市場に公開する仕組みを担保する趣旨とされます。登録すると発行される「登録済証(登録証明書)」で、依頼した物件が実際に登録されたかを確認できます。
「囲い込み」とは何か
「囲い込み」とは、一般に、売却を依頼された仲介会社が、他社からの問い合わせや購入希望に対して物件情報を十分に開示せず、自社で買主も見つけて売主・買主の双方から仲介手数料を得る「両手取引」に持ち込もうとする行為を指すとされます。売主にとっては、本来届くはずの購入希望が届かず、売却の機会や価格の面で不利に働くおそれが指摘されてきました。
この点について、国土交通省は宅地建物取引業法施行規則を改正し(令和6年6月改正・令和7年〈2025年〉1月1日施行)、専任媒介・専属専任媒介で預かった物件はレインズの取引状況(ステータス)を最新の状態に保つことを求めています。ステータスは「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の区分で、実際の販売状況と登録内容に相違があるなどの場合は、宅地建物取引業法第65条第1項に基づく指示処分の対象になり得るとされています(国土交通省 報道発表資料「レインズの機能強化について」、2026-07-17 確認 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00087.html )。
制度の詳細や個別事案の判断は変わり得るため、疑問がある場合は宅地建物取引士など専門家や、監督行政庁(都道府県・国土交通省)の窓口にご確認ください。
査定額の高さだけで選ばない
会社選びで迷いやすいのが、査定額(この会社ならこの価格で売れそう、という見立て)の高さです。ただし査定額はあくまで見立てであり、実際に売れる価格を保証するものではありません。高い査定額を示した会社に依頼しても、その価格で売れず、結局は値下げに至ることもあり得ます。
査定額の根拠(近隣の取引事例や収益からの逆算など、どのデータをどう使ったか)を確かめ、複数社の見立てを「幅」として捉える見方が実務的とされます。価格の目安の考え方は関連記事で扱います。
- 査定額は「見立て」であり、売却価格の保証ではない
- 査定額の根拠(事例・時点・前提)を確かめる
- 1社の数字を鵜呑みにせず、複数の見立てを幅で捉える
中立に見る比較の観点
以上を踏まえ、仲介会社を比べるときに中立にそろえたい観点を整理します。いずれも一律の正解を示すものではなく、確認の入口としての整理です。特定の会社や媒介契約の種類を勧めるものではありません。
どの媒介契約を選ぶか(窓口を1社に絞るか複数に広げるか)、どの会社に依頼するかは、物件の種類・エリア・売り急ぎの有無・自分がどこまで関わりたいかによって変わります。売主自身がレインズの登録状況や販売状況の報告を確認できることも、囲い込みへの一つの備えとされます。
- 媒介契約の種類ごとの違い(依頼社数・報告頻度・登録義務・期間)を理解しているか
- レインズへの登録状況(登録済証・取引状況のステータス)を確認できるか
- 査定額の高さだけでなく、その根拠と販売の進め方を説明してくれるか
- 報告の頻度・内容や、問い合わせへの対応方針を確認できるか
- 賃貸中(オーナーチェンジ)物件など、自分の物件の特性に対応した実績があるか
まとめ:仕組みを知ってから比べる
共通するのは、媒介契約の種類とレインズ・囲い込みの仕組みを先に知っておくと、査定額の高さだけに引っ張られずに落ち着いて比べられる、という点です。どの契約・どの会社が良いかは物件と売主の状況によって変わり、一律の正解はありません。
契約内容や法的な細部の判断は宅地建物取引士や弁護士などの専門家へ、売却に伴う税の扱いは税理士へご確認ください。自分の物件の残債や想定売却価格を並べて手残りを確かめたい場合は、meyasu の物件カルテ「お金」ビューでも試算できます(表示はすべて参考値・試算です)。
よくある質問
- 一般・専任・専属専任の媒介契約は何が違いますか?
- 主な違いは、複数社に同時依頼できるか、自分で見つけた買主と直接取引できるか、レインズへの登録義務があるか、報告の頻度です。一般は複数社に依頼でき登録義務はありません。専任は1社のみで契約日の翌日から7日以内(休業日を除く)のレインズ登録と2週間に1回以上の報告、専属専任は1社のみで自己発見取引ができず5日以内の登録と1週間に1回以上の報告が定められています。どれが良いかは物件・状況により、一律には決まりません(参考情報です)。
- レインズ(指定流通機構)とは何ですか?
- 国土交通大臣が指定した不動産流通機構が運営する、不動産会社間で物件情報を共有するネットワークです。物件が登録されると他社も情報を見て買主を探せるため、情報が広く行き渡りやすくなります。専任・専属専任媒介では登録が義務づけられており、登録すると発行される登録済証(登録証明書)で登録の有無を確認できます。
- 「囲い込み」とは何ですか?対策はありますか?
- 一般に、依頼を受けた仲介会社が他社に物件情報を十分開示せず、自社で買主も見つけて売主・買主双方から手数料を得る「両手取引」に持ち込もうとする行為を指すとされます。2025年1月施行の宅地建物取引業法施行規則の改正で、専任・専属専任で預かった物件はレインズの取引状況(公開中/書面による購入申込みあり/売主都合で一時紹介停止中)を最新に保つことが求められ、相違がある場合などは宅地建物取引業法第65条第1項に基づく指示処分の対象になり得るとされています。売主自身が登録状況や報告を確認することも一つの備えとされます。詳細は専門家や監督行政庁の窓口にご確認ください。
- 査定額がいちばん高い会社に頼めばよいですか?
- 査定額は「この価格で売れそう」という見立てであり、実際に売れる価格を保証するものではありません。高い査定額でも、その価格で売れず値下げに至ることもあり得ます。査定額の根拠(事例・時点・前提)や販売の進め方の説明を確かめ、複数社の見立てを幅として捉える見方が実務的とされます。特定の会社を勧めるものではありません。
本記事は一般的な情報の提供であり、特定の物件・契約・投資判断の推奨や、税務・法務の助言ではありません。数値はすべて参考値・試算です。税務・契約・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家に、借入の可否は金融機関にご確認ください。