運用にかかる費用の内訳——管理費・修繕・保険・税
実質利回りや手残りの「分母」を作っているのが運用費用です。どんな費目があり、何が固定で何が変動なのかを、費目ごとに落ち着いて分解して見ていきます。
この記事の位置づけ——費目で分解して見る
「利回りは良さそうだが、実際に手元にいくら残るのか」を左右するのが、運用にかかる費用です。家賃収入から差し引かれるこれらの費用を、ざっくり一括りにせず費目ごとに分解して見ると、実質利回りや手残りの見通しが立てやすくなります。
本記事は費目の整理を目的とした一般的な参考情報であり、特定の物件・契約の推奨や、税額の計算・投資助言ではありません。金額は物件の種別・築年・エリア・管理体制で大きく異なるため、以下では具体的な水準を断定せず、費目の考え方と目安の幅として示します。
まず「固定費」と「変動費」に分ける
運用費用は、毎年ほぼ一定でかかる固定費と、退去や故障などの発生に応じて振れる変動費に分けて捉えると見通しが立てやすくなります。
固定費は毎月・毎年の収支に安定して効き、変動費はある年だけ大きく膨らむことがあります。年ごとの上下に振り回されないよう、変動費は数年単位で均して織り込む考え方が一般的です。
- 固定費(例):建物管理費・修繕積立金(区分)、損害保険料、公租公課、賃貸管理委託費 など
- 変動費(例):修繕・原状回復費、設備の故障対応、入居者募集の費用、空室・滞納による欠損 など
費目の全体像(参考)
賃貸運用でかかる主な費目を、分類とあわせて一覧にすると次のとおりです(いずれも参考としての整理で、発生の有無や大きさは物件により異なります)。
| 費目 | 分類(目安) | 主な内容 |
|---|---|---|
| 建物管理費(区分の共用部) | 固定 | 共用部の清掃・設備点検・管理員費など。区分マンションで毎月かかる |
| 修繕積立金(区分) | 固定 | 大規模修繕に備えた積立。区分で発生し、一棟は自前での積立が必要 |
| 賃貸管理委託費 | 準固定(家賃連動) | 入居者対応・集金・更新事務などの委託費。家賃に対する割合で設定されることが多い |
| 修繕・原状回復費 | 変動 | 退去時の原状回復、設備の故障対応、改修。金額の振れが大きい |
| 損害保険料 | 固定 | 火災保険(+地震保険)。契約期間分を前払いし、満期管理が必要 |
| 公租公課 | 固定 | 固定資産税・都市計画税など。評価額に応じて毎年課税される |
| 空室・滞納による欠損 | 変動 | 空室期間の家賃減や未回収分。稼働率で大きく変わる |
| その他 | 固定・変動 | 共用部の光熱費、入居者募集の広告費、記帳・税務顧問費用など |
管理の費目——建物管理費と賃貸管理委託費
管理の費用は、大きく「建物そのものの管理」と「賃貸経営の管理」に分かれます。区分マンションでは、共用部の清掃・設備点検などにあてる建物管理費と、大規模修繕に備える修繕積立金が、毎月ほぼ定額でかかります。一棟の場合はこれらに相当する管理・積立を自分で手配・準備することになります。
入居者対応・集金・更新事務などを管理会社に委託する賃貸管理委託費は、家賃に対する割合で設定されることが多く、家賃の3〜5%程度が一般的な目安とされます(集金代行のみなら低め、入居者対応や原状回復手配まで含む幅広い委託では5%前後、サブリース契約では10〜20%程度とされることもあります)。これらは管理会社各社の解説に基づく参考値で、委託する業務範囲や契約により幅があります(複数の管理会社の公表資料、2026-07-17 確認・要検証)。
なお、管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者は国土交通省への登録が義務づけられています(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律、国交省ポータル、2026-07-17 確認 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/how_to_register.html)。登録の有無は委託先を見るときの一つの目安になります。
修繕・原状回復——変動費の代表
退去時の原状回復や設備の故障対応、経年に伴う改修は、発生する年としない年で金額が大きく振れる変動費の代表です。区分では大規模修繕は修繕積立金でまかなう設計ですが、専有部の設備更新は別途かかります。一棟では屋根・外壁・給排水などの修繕を自分で計画・負担します。
原状回復については、通常の使用による損耗(通常損耗)や時間経過による劣化(経年変化)は原則として貸主(オーナー)負担とされ、借主が原状回復義務を負うのは故意・過失や善管注意義務違反による損耗等に限られる、というのが国土交通省ガイドラインおよび2020年4月施行の改正民法第621条の基本的な考え方です(国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、2026-07-17 確認 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html)。負担区分の個別判断は契約内容や事案によるため、トラブル時は専門家や自治体の相談窓口にご確認ください。
損害保険——火災・地震と満期管理
火災保険は建物・設備の損害に備える基本の費目で、水災や施設賠償などの特約を付けるかで補償と保険料が変わります。地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯する形で契約する仕組みです。保険金額は火災保険金額の30〜50%の範囲内(建物5,000万円・家財1,000万円が限度)とされ、大規模地震の巨額損害を政府が再保険で支える制度です(財務省「地震保険制度の概要」、2026-07-17 確認 https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm)。
補償範囲・保険料は各社・約款で異なるため、特定の商品を勧めるものではなく、内容の確認が前提です。保険期間が長期化していることもあり、満期を過ぎて無保険の期間が生じないよう、更新時期の管理が費用管理の一部になります。
公租公課——固定資産税・都市計画税
所有している間、毎年かかるのが固定資産税・都市計画税です。固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税は0.3%を上限とする制限税率と地方税法で定められています(総務省 地方税制度:固定資産税 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_15.html /都市計画税 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_16.html 、2026-07-17 確認)。
実際の税額は固定資産税評価額や自治体・各種の軽減措置によって変わります。本記事は税額の計算を行いません。税額の試算や軽減措置の適用可否の判断は、税理士や各自治体の窓口にご確認ください。
見えにくい費用——空室・滞納による欠損
支出の伝票が出ないため見落とされやすいのが、空室期間の家賃減や家賃の未回収による「欠損」です。満室想定の家賃を前提にすると手残りを楽観的に見積もりやすいため、費用と同様に稼働率の低下を織り込んでおく考え方が実務的です。
空室率の水準は地域・築年・需給で大きく異なり、一律の目安を当てはめることはできません。空室の影響と備え方は関連記事で扱います。
費目は「控えめに」見積もる
費用の見積りは、楽観的に置くと後で手残りが想定を下回りやすくなります。各費目はやや多め(保守的)に見込み、変動費は数年単位で均して織り込むと、下振れへの耐性を確認しやすくなります。
費目ごとの実額を積み上げ、推定と実績を分けて記録していくと、年を追うごとに精度が上がります。ご自身の物件の費目を実額で管理したい場合は、meyasu の物件カルテ「お金」ビューで費目を入力して収支を確認できます。個別の状況を整理したいときは AI 相談も参考になります(いずれも参考情報であり、投資判断はご自身で行ってください)。
- 各費目を控えめに(多めに)見込む
- 修繕・原状回復など変動費は数年単位で均して織り込む
- 満室想定でなく空室・滞納を差し引いて見る
- 推定と実績を分けて記録し、実額で精度を上げる
よくある質問
- 運用費用は家賃収入のどれくらいが目安ですか?
- 一律の目安はありません。運用費用の割合は物件の種別(区分/一棟)・築年・エリア・管理体制で大きく変わります。おおまかな比率で当てはめるより、建物管理費・賃貸管理委託費・修繕/原状回復・損害保険・公租公課・空室欠損などの費目を一つずつ積み上げて見る方が実態に近づきます。数値はすべて参考値・試算です。
- 区分マンションと一棟で費用の内訳はどう違いますか?
- 区分マンションでは共用部の建物管理費と修繕積立金が毎月ほぼ定額でかかる一方、大規模修繕は積立でまかなう設計です。一棟ではこれらに相当する管理・修繕を自分で手配・積立することになり、屋根・外壁・給排水などの修繕を自ら計画・負担します。どちらが有利かは物件や運用方針により、一律には決まりません。
- 固定資産税はいくらかかりますか?
- 固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税は0.3%を上限とする制限税率と地方税法で定められています(総務省 地方税制度)。ただし実際の税額は固定資産税評価額や自治体・軽減措置によって変わります。本記事は税額の計算を行いません。税額の試算や軽減の適用可否は、税理士や各自治体の窓口にご確認ください。
- 退去時の原状回復費用は誰が負担しますか?
- 通常の使用による損耗(通常損耗)や経年変化は原則として貸主(オーナー)負担とされ、借主が原状回復義務を負うのは故意・過失や善管注意義務違反による損耗等に限られる、というのが国土交通省ガイドラインおよび改正民法第621条の基本的な考え方です。負担区分の個別判断は契約内容や事案により、トラブル時は専門家や自治体の相談窓口へご確認ください。
本記事は一般的な情報の提供であり、特定の物件・契約・投資判断の推奨や、税務・法務の助言ではありません。数値はすべて参考値・試算です。税務・契約・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家に、借入の可否は金融機関にご確認ください。