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保有・運用

家賃下落の見込みを計画にどう織り込むか

「家賃はどれくらい下がる前提で計画すべき?」に一律の答えはありません。下がり得る理由と、公的データが実際に示していること、将来の収支へ保守的に織り込む型を、落ち着いて整理します。

文責: Meyasu 編集部8公開 2026/8/29

この記事の位置づけ:「毎年○%下がる」とは言い切れない

保有物件の長期の収支を考えるとき、将来の家賃をどう置くかで計画は大きく変わります。本記事は、家賃の変化を将来のキャッシュフローにどう織り込むかを中立に整理する参考情報であり、特定の物件・投資判断を推奨するものではありません(投資助言ではありません)。

先に枠組みだけ述べると、家賃は築年や周辺の需給によって下がり得る一方で、「毎年○%下がる」という全国一律の下落率が公的に定まっているわけではありません。下落を見込んで計画すること自体は保守的な備えとして一般的ですが、その率は物件・エリア・時期で変わるため、一つの数字に決め打ちせず、幅のある前提として置くのが実務的とされます。

家賃が下がり得る理由

家賃が下がり得る背景として、一般に次のような要因がよく挙げられます。

  • 築年の経過:設備や内装の相対的な古さが、周辺の新しい物件と比べたときの競争力に影響することがある
  • 周辺の新規供給:近隣に新築や競合物件が増えると、需給の面で家賃が抑えられることがある
  • エリアの需給変化:人口・世帯数や賃貸需要の変化が、中長期の家賃水準の背景になる
  • 求められる設備・仕様の変化:ニーズが変わると、旧来の間取りや設備が見劣りすることがある

公的データが実際に示していること

「家賃は時間とともに下がる」というイメージは広く語られますが、公的な統計で全体像を見ると、話はもう少し複雑です。

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によると、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃の全国平均は59,656円で、前回(2018年)調査と比べて7.1%の増加でした。民営借家でみても、木造が54,409円(4.5%増)、非木造が68,548円(7.0%増)と、いずれも上昇しています。調査はおおむね5年ごとに実施され、次回以降の値は変わり得るため、最新の値は要確認です。

ここで大切なのは、これは全国平均・調査時点の姿だという点です。全体の平均が上がっていても、個別の物件が築年やエリアの事情で下がることはあり得ますし、その逆もあります。「平均が上がっている=自分の物件も上がる」でも、「一般に下がると言われる=自分の物件も毎年下がる」でもなく、全国の趨勢と自分の物件・エリアの実際を分けて確かめる姿勢が、中立な見方です。

需給の背景としての人口(長期の視点)

中長期の賃貸需要の背景として、人口の見通しが参照されることがあります。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、日本の総人口は2020年の1億2,615万人から2070年には8,700万人(2020年の69.0%)へ減少し、65歳以上の割合(高齢化率)は28.6%から38.7%へ上昇すると見込まれています。将来推計は出生・死亡の仮定によって幅があり、定期的に改定されるため、最新の推計は要確認です。

ただし人口は全国一律に動くわけではなく、増える地域と減る地域の差が大きい点に注意が要ります。全国の総人口が減っても、賃貸需要が集まるエリアでは家賃が保たれることもあります。将来の家賃を考えるときは、全国の趨勢とあわせて、自分の物件があるエリアの需給を個別に見るのが実務的とされます。

下落が顕在化しやすい場面(入替時)

家賃の変化は、毎月なだらかに起きるというより、入居者の入れ替え時に顕在化しやすいと言われます。継続入居中の家賃は契約が続く限り基本的に据え置かれ、退去後の再募集で周辺相場に合わせて条件を見直す、という形になりやすいためです。

そのため、これから貸すときの募集家賃と、実際に成約した家賃・継続中の家賃は分けて捉える必要があります。将来の収支を考えるときは、単純に毎年一定率で下げるより、「何年ごとに入れ替えがあり、そのつど相場に合わせるとどうなるか」という観点のほうが、実態に近いことがあります。周辺相場の調べ方は関連記事「家賃は相場と比べて妥当?——賃料の調べ方」で扱っています。

将来のキャッシュフローへの織り込み方(型)

将来のキャッシュフローに家賃の変化を織り込むときは、一つの数字に決め打ちせず、複数のシナリオで幅を見ておく考え方があります。以下は前提の置き方の一例です(数値は物件・エリアで変わるため、具体的な下落率は示しません)。

将来家賃の置き方の一例(仮の前提・試算。特定の水準を示すものではありません)
シナリオ家賃の置き方(例)使いどころ
据え置き現在の家賃を横ばいで置く短期の見通しや、需給が強いエリアの上限側の確認
緩やかに低下数年ごとに小幅に見直す前提で置く中庸なケースの中心として
保守的に低下低下幅を大きめに、空室も厚めに置く下振れに耐えられるかの下限側の確認

前提を点検する観点

将来の家賃を置くときに、確認しておきたい観点を整理します(いずれも断定ではなく、点検の視点です)。

  • 家賃は「毎年一定率で下がる」ではなく「入替時に相場へ調整される」置き方も試してみる
  • 楽観・中庸・保守の複数シナリオで見て、保守側でも返済や修繕の備えが回るかを確認する
  • 家賃だけを単独で下げず、空室・原状回復・修繕の備えとあわせて見る
  • 全国平均ではなく、自分の物件があるエリアの需給や供給予定を見る
  • 家賃の改定・更新の条件は借地借家法などが関わるため、実際の交渉・改定は宅地建物取引士・弁護士等の専門家に確認する

よくある誤解

家賃下落をめぐっては、次のような受け取り方が見られますが、いずれも一面的です。

「築年が経てば毎年○%下がる」——一律の下落率が公的に定まっているわけではなく、前掲の総務省調査では全国平均の家賃はむしろ上昇した局面もあります。下落幅は物件・エリアで大きく異なります。

「全国平均が上がっているから自分の物件も安泰」——平均と個別は別ものです。周辺の新規供給や築年の影響で、個別には下がることもあります。

「一度下げたら戻らない」——設備更新やエリアの変化で家賃が持ち直す局面もあります。下落は固定的な宿命ではなく、需給と物件の状態で動きます。

まとめ

家賃は築年や需給によって下がり得ますが、「毎年○%」という全国一律の下落率はありません。公的データでは全国平均の家賃がむしろ上昇した局面もあり、平均と個別、全国とエリアを分けて見ることが出発点になります。将来の収支に織り込むときは、一つの数字に決め打ちせず、楽観・中庸・保守の幅で見て、保守側でも回るかを確認する考え方が実務的とされます。

自分の物件の家賃・空室・返済をふまえた将来の収支は、アプリの「お金」ビューで数字を置きながら確認できます。下落を見込んだ場合の収支を具体的に整理したいときは、AI相談で状況に沿って整理することもできます(すべて参考値・試算としての表示です)。

  • 次に読む: 「毎月の手残りを管理する——収支の見方」(実額での収支把握)
  • 次に読む: 「空室が出たら手残りはどうなる?——備え方」(空室と家賃の下振れ)

よくある質問

家賃は毎年決まった率で下がるのですか?
全国一律の下落率が公的に定まっているわけではありません。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」では、借家(専用住宅)の全国平均家賃は前回調査と比べて上昇しており、家賃は必ず一定率で下がるとは言えません。下落幅は築年・エリア・需給で大きく異なるため、一つの数字に決め打ちせず幅で見る考え方が一般的です。数値はすべて参考値です。
将来の計画では下落率を何%で見ておけばよいですか?
「この率が正解」という一律の目安はありません。各社が公表する試算値も前提が異なるため、そのまま自分の物件に当てはめるのは慎重にしたいところです。据え置き・緩やかに低下・保守的に低下といった複数シナリオで幅を見て、保守側でも返済や修繕の備えが回るかを確認する考え方が実務的とされます(いずれも参考値・試算です)。
全国平均は上がっているのに、なぜ下落を見込むのですか?
全国平均と個別の物件は別ものだからです。平均が上がっていても、周辺の新規供給や築年の影響で個別には下がることがあり、その逆もあります。保守的な計画づくりとして下振れの可能性を点検しておくもので、「必ず下がる」という意味ではありません。自分の物件・エリアの実際で確かめる姿勢が中立な見方です。
家賃の値下げや更新時の改定はどう進めればよいですか?
家賃の改定や契約更新の条件は借地借家法などが関わるため、当サービスでは個別の判断は行いません。実際の交渉・改定は宅地建物取引士・弁護士等の専門家にご確認ください。本記事は、将来の収支に家賃の変化をどう織り込むかという計画上の考え方を、参考として整理するものです。
この記事は特定の売買・契約を勧めるものではありません。私たちの中立の約束をご覧ください。

出典: 総務省統計局(令和5年住宅・土地統計調査)国立社会保障・人口問題研究所(日本の将来推計人口)

本記事は一般的な情報の提供であり、特定の物件・契約・投資判断の推奨や、税務・法務の助言ではありません。数値はすべて参考値・試算です。税務・契約・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家に、借入の可否は金融機関にご確認ください。

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