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保有・運用

空室が出たら手残りはどうなる?——備え方

満室を前提にすると手残りは楽観的に見えます。家賃が止まっても返済や固定費は続く——空室が効く仕組みと、公的統計の読み方、そして空室をあらかじめ織り込む試算の型を、落ち着いて整理します。

文責: Meyasu 編集部8公開 2026/8/5

この記事の位置づけ——空室は「起こり得る前提」

賃貸経営では、入居者の退去や、次の入居が決まるまでの空室期間が、程度の差はあれ起こり得ます。空室を完全になくすことは難しく、実務では「起こらない前提」ではなく「起こり得る前提」として、あらかじめ手残りの見通しに織り込んでおく考え方が一般的とされます。

本記事は、空室が手残りや返済にどう効くのか、その仕組みと備え方を中立に整理する参考情報です。特定の物件・手法の推奨や、投資助言ではありません(数値はすべて仮の数値・試算です)。

空室が手残りと返済に効く仕組み

家賃収入は、入居者がいる間だけ入ってきます。一方、物件を保有している間の支出——ローンの返済、建物管理費・修繕積立金(区分)、損害保険料、公租公課など——の多くは、入居者の有無にかかわらず続きます。つまり空室が出ると、入り(家賃)が止まる一方で出(返済・固定費)は止まらないため、その差額がそのまま手残りを押し下げます。

特にローンを組んでいる場合、返済は空室でも待ってくれません。手残りが薄い運営では、一室の空室が単月の収支をマイナスに転じさせることもあります。だからこそ、空室が続いても何か月耐えられるか(手元資金の余裕)をあらかじめ把握しておく考え方が実務的とされます。

  • 空室でも続きやすい出:ローン返済、建物管理費・修繕積立金(区分)、損害保険料、固定資産税・都市計画税
  • 空室で止まる入:家賃・共益費(次の入居が決まるまで)
  • 空室で新たに出やすい費:退去時の原状回復費、入居者募集の広告費(AD)など

一室の空室が年間の手残りにどう効くか(仮の数値・試算の型)

空室の影響は、率ではなく「額」と「期間」で見ると分かりやすくなります。以下は計算の流れを示すための仮の数値で、実際の物件・市場を表すものではありません(すべて仮の数値・試算です)。

前提(仮):家賃 月8万円の部屋が1室。年間の想定家賃は 8万円 × 12 = 96万円。ここで退去から次の入居まで3か月空いたとすると、失う家賃は 8万円 × 3 = 24万円。年間の想定家賃96万円に対して、その年の家賃は72万円に目減りします。さらに退去に伴う原状回復費や募集の広告費が加わると、その年の手残りはより小さくなります。

複数戸を持つ一棟でも考え方は同じで、おおまかには「空いた戸数 × 空室月数 × 家賃」が、その期間に失う家賃の目安になります。返済や固定費はその間も続くため、空室期間が長引くほど手残りへの影響は大きくなります。この例はあくまで計算の型を示すもので、特定の空室期間や結果を見込むものではありません。

「空室率」をどう考えるか——公的統計が示すもの

「空室率は何%を見込めばよいか」は多くの方が気にする点ですが、一律の『普通の空室率』を当てはめることはできません。空室の起こりやすさは、エリアの需給・築年・間取り・家賃設定・管理の状況などで大きく変わるためです。

全体像をつかむ手がかりとして、公的統計があります。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(住宅及び世帯に関する基本集計・確報集計、2024年9月公表)によると、2023年10月時点の全国の空き家は900万2千戸で、総住宅数(6,504万7千戸)に占める空き家率は13.8%と、前回2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し過去最高となりました。空き家の種類別では『賃貸用の空き家』が443万6千戸で、空き家総数の49.3%を占めます(総務省統計局、2026-07-17 確認 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html)。

ただしこの『賃貸用の空き家』は、全国で賃貸のために空いている住宅の戸数という在庫(ストック)を示すもので、そのまま『あなたの物件が空く確率』や『市場の平均空室率』を表すわけではありません。地域差が非常に大きいため、公的統計は全体像の把握にとどめ、個別の見通しは自分の物件のエリア・条件で確かめる必要があります。

空き家の種類別内訳(全国・2023年10月時点、参考)
空き家の種類戸数(参考)空き家総数に占める割合
賃貸用の空き家443万6千戸49.3%
売却用の空き家32万6千戸約3.6%
二次的住宅(別荘など)38万4千戸4.3%
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家385万6千戸42.8%
空き家 総数900万2千戸100.0%

空室が出たときの実務——原状回復・募集・条件の見直し

入居者が退去すると、次の入居に向けて主に『原状回復』『募集』『条件の見直し』という実務が動きます。それぞれに費用や時間がかかり、その分が空室期間と手残りに影響します。

原状回復については、通常の使用による損耗(通常損耗)や時間経過による劣化(経年変化)は原則として貸主(オーナー)負担とされ、借主が原状回復義務を負うのは故意・過失や善管注意義務違反による損耗等に限られる、というのが国土交通省ガイドラインおよび2020年4月施行の改正民法第621条の基本的な考え方です(国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、2026-07-17 確認 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html)。負担区分の個別判断は契約内容や事案により分かれるため、トラブル時は専門家や自治体の相談窓口にご確認ください。

募集では、家賃・初期費用・設備といった条件が、入居の決まりやすさに影響するとされます。周辺の募集事例と比べて条件が市場から外れていないかを確かめる考え方があります(相場との比べ方は「家賃は相場と比べて妥当?——賃料の調べ方」で扱います)。広告料(AD)やフリーレント、設備の追加などの募集条件は、空室期間の短縮と手残りのバランスで捉えるもので、一律の正解はありません。

空室を「あらかじめ織り込む」試算の考え方

空室の影響は、起きてから慌てるより、購入・保有の試算の段階であらかじめ織り込んでおく方が、下振れに強い見方になります。満室想定の家賃をそのまま使うと、手残りを楽観的に見積もりやすいためです。

実務では、想定家賃の一定割合だけが入るという稼働率での置き方や、年間で一定の空室月数を差し引く置き方などが用いられます。どの水準を置くかに一律の正解はなく、エリアや物件の状況に応じて控えめに(保守的に)見積もる考え方が挙げられます。家賃そのものが経年で下がり得る点と重なる場合の織り込み方は、関連記事で扱います。

  • 満室想定でなく、稼働率や空室月数を差し引いて家賃を見込む
  • 退去時の原状回復費・募集費を、数年に一度発生する費目として織り込む
  • 金利上昇や家賃下落と重なった場合でも返済が回るかを併せて確認する
  • 空室が続いても数か月は耐えられる手元資金を確保しておく

空室を長引かせないための観点(中立の確認ポイント)

空室を長引かせないための取り組みに、万人向けの正解はありません。ただ、一般に次のような観点が挙げられます(いずれも一律の効果を保証するものではなく、エリアや物件の状況によります)。判断に迷う場合は、管理会社や専門家に相談しながら進めるのが実務的です。

  • 周辺の募集事例と、家賃・初期費用・設備の条件がかけ離れていないか
  • 退去の連絡から募集開始・原状回復までの段取りが滞っていないか
  • 管理会社の入居者募集や対応の状況を、報告内容で確認できているか
  • 内見時の印象(清掃・写真・設備の状態)に改善の余地がないか

まとめ

空室は賃貸経営で起こり得る前提であり、家賃が止まっても返済や固定費は続くため、手残りに直接効きます。『普通の空室率』に一律の正解はなく、公的統計は全体像の把握にとどめ、個別の見通しは自分の物件のエリア・条件で確かめるのが実務的です。空室はあらかじめ試算に織り込み、退去時の原状回復や募集の条件は専門家や管理会社と相談しながら進める——この備えが、下振れへの耐性につながるとされます。

自分の物件で、空室を織り込んだ手残りや、空室が続いたときの収支を具体的に見たい場合は、meyasu の物件カルテ「お金」ビューでも試算できます(表示はすべて参考値・試算です)。

  • 次に読む: 「毎月の手残りを管理する——収支の見方」(入りと出を分けて記録する)
  • 次に読む: 「家賃下落の見込みを計画にどう織り込むか」(経年での賃料低下の織り込み)
  • 次に読む: 「家賃は相場と比べて妥当?——賃料の調べ方」(募集条件を相場と比べる)

よくある質問

空室率は何%を見込めばよいですか?
一律の目安はありません。空室の起こりやすさはエリアの需給・築年・間取り・家賃設定・管理の状況で大きく変わります。総務省の住宅・土地統計調査などの公的統計は全国の空き家の在庫を把握する手がかりにはなりますが、そのまま個別物件の空室率を表すものではありません。特定の空室率を普通・適正と断定することはできず、ご自身の物件のエリア・条件で確かめる必要があります。数値はすべて参考値・試算です。
空室の間も、ローンの返済や費用はかかりますか?
ローン返済、建物管理費・修繕積立金(区分)、損害保険料、固定資産税・都市計画税などの多くは、入居者の有無にかかわらず続くのが一般的です。加えて、退去時には原状回復費や入居者募集の広告費が新たに発生することがあります。家賃が止まっても出は止まりにくいため、空室が続いても数か月は耐えられる手元資金の余裕を確認しておく考え方が実務的とされます。
退去時の原状回復費用は誰が負担しますか?
通常の使用による損耗(通常損耗)や経年変化は原則として貸主(オーナー)負担とされ、借主が原状回復義務を負うのは故意・過失や善管注意義務違反による損耗等に限られる、というのが国土交通省ガイドラインおよび改正民法第621条の基本的な考え方です。ただし負担区分の個別判断は契約内容や事案により分かれます。トラブル時は専門家や自治体の相談窓口へご確認ください。
空室がなかなか埋まりません。どうすればよいですか?
一律の正解はありません。一般には、周辺の募集事例と家賃・初期費用・設備の条件がかけ離れていないか、募集や原状回復の段取りが滞っていないか、管理会社の対応や内見時の印象に改善の余地がないか、といった観点が挙げられます。募集条件の変更は空室期間の短縮と手残りのバランスで捉えるもので、判断に迷う場合は管理会社や専門家に相談しながら進めるのが実務的です。
この記事は特定の売買・契約を勧めるものではありません。私たちの中立の約束をご覧ください。

本記事は一般的な情報の提供であり、特定の物件・契約・投資判断の推奨や、税務・法務の助言ではありません。数値はすべて参考値・試算です。税務・契約・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家に、借入の可否は金融機関にご確認ください。

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