meyasu
相場・査定

還元利回り(キャップレート)で価格を見る考え方

収益物件は「そこから毎年いくら生むか」から価格を逆算して見ることができます。年間の純収益と還元利回り(キャップレート)の関係を、仮の数値で落ち着いて整理します。

文責: Meyasu 編集部9公開 2026/7/28

収益還元法とは(収益から価格を逆算する)

収益物件の価格を見るときの考え方のひとつに「収益還元法」があります。物件が将来生み出すと期待される収益をもとに、価格を逆算して捉える見方です。取引事例から見る方法や、土地・建物の再調達コストから積み上げる方法(積算)と並ぶ、価格をとらえる代表的な観点の一つとされています。

国土交通省の「不動産鑑定評価基準」では、収益還元法は対象不動産が生み出すと期待される純収益の現在価値をもとに価格(収益価格)を求める手法と位置づけられています。この記事では、その基本にある「年間の純収益 ÷ 還元利回り」という関係の考え方を、仮の数値で平易に整理します(本記事は特定の物件・価格を推奨する投資助言ではなく、参考情報です)。本記事は同基準の考え方を平易に紹介するもので、正式な鑑定評価そのものではありません。

基本の関係:価格 ≒ 年間の純収益(NOI)÷ 還元利回り

収益還元法のうち、一期間(一般に1年)の純収益を使うシンプルな方法は「直接還元法」と呼ばれます。おおまかには次の関係で捉えます(いずれも参考としての式で、費用の置き方や定義によって数字は変わります)。

この式は、還元利回り(キャップレート)が同じなら純収益が大きいほど価格は高く、純収益が同じなら還元利回りが低いほど価格は高く出る、という関係を表しています。逆に言えば、価格と純収益が分かれば「その価格に対して市場がどのくらいの利回りを見込んでいるか」を逆算することもできます。

  • 収益価格(参考)= 年間の純収益(NOI)÷ 還元利回り(キャップレート)
  • 還元利回り(参考・逆算)= 年間の純収益(NOI)÷ 価格

NOI(純収益)の出し方——満室想定ではなく費用・空室を引いた後

この式で使う「純収益(NOI: Net Operating Income)」は、満室を前提にした家賃の総額ではありません。不動産鑑定評価基準では、純収益はおおまかに「運営収益 − 運営費用」として捉えられます。実際の運営に近づけるため、空室・滞納による損失や、運営にかかる費用を差し引いた後の数字を使う点が要点です。

運営収益は、満室想定の家賃から空室・滞納の損失を控除して考えます。運営費用には、建物管理費・賃貸管理委託費・修繕(引当を含む)・損害保険料・公租公課(固定資産税など)といった費目が含まれるのが一般的です。ローンの返済(元利)は、物件そのものの収益力を見る純収益の計算には含めない考え方が一般的とされています。

ここで費用や空室を楽観的に見積もるほどNOIは大きく出て、同じ還元利回りでも価格は高く見えます。数字そのものより、どんな前提でNOIを置いたかを確認することが大切です(費目の内訳は関連記事で詳しく扱います)。

数値を当てはめた計算例(すべて仮の数値)

以下は計算の流れを示すための仮の数値です。実際の物件・市場を表すものではありません(すべて仮の数値・試算)。

前提(仮): 満室想定の年間家賃 500万円/空室・滞納損失 25万円(家賃の5%と仮定)/年間運営費 145万円(管理費・修繕引当・保険・公租公課など)。

運営収益(参考)= 500万円 − 25万円 = 475万円。純収益(NOI・参考)= 475万円 − 145万円 = 330万円。

還元利回りを5.0%と置いた場合の収益価格(参考)= 330万円 ÷ 5.0% = 6,600万円。

同じNOIでも、還元利回りを6.0%と置くと 330万円 ÷ 6.0% ≒ 5,500万円となり、利回りの置き方だけで価格が大きく動くことが分かります。この例はあくまで計算の型を示すもので、特定の価格や利回りが妥当だと示すものではありません。

還元利回り(キャップレート)はどこで決まるか

還元利回りは「この収益に対して市場がどれくらいの利回りを求めるか」を表す数字で、一定の決まった値があるわけではありません。エリア(都心か地方か)、物件種別(区分か一棟か・住宅かオフィスか)、築年、市場全体の金利や投資家の姿勢などによって変わり、時期によっても動きます。一般に、需要が厚く安定を重視される都心・築浅ほど利回りは低め(価格は高め)に、リスクを見込む地方・築古ほど高め(価格は低め)になりやすいとされます。

市場でどのくらいの水準が意識されているかを知る参考として、日本不動産研究所の「不動産投資家調査」(機関投資家等への期待利回りのアンケート、年2回公表)などが公開されています。たとえば同調査の第53回(2025年10月時点)では、東京・城南地区のワンルームタイプの期待利回りが3.7%とされるなど、都心の賃貸住宅で3%台後半といった水準が示されていますが、これは大型・機関投資家向けの調査で、個人が扱う一般的な物件にそのまま当てはまるとは限りません。同調査は半期ごとに更新されるため、数値は閲覧時点の最新版でご確認ください。

直接還元法とDCF法(収益還元法の2つの方法)

収益還元法には、大きく2つの方法があるとされます。ここまで見た「直接還元法」は、一期間(通常1年)の純収益を還元利回りで割って価格を求める、比較的シンプルな方法です。

もう一つの「DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)」は、保有期間中の各年の純収益と、期間終了時に売却したと仮定した場合の価格(復帰価格)を、それぞれ現在価値に割り引いて合計する方法です。将来の家賃下落や費用の変化、売却時点まで織り込みやすい一方、前提の置き方が多く複雑になります。どちらも収益から価格をとらえる点は共通で、目的や情報量に応じて使い分けられます。個別物件の正式な評価は、後述のとおり不動産鑑定士による鑑定評価の領域です。

表面利回りとの違い(参考の整理)

「表面利回り」は物件広告で目立つ数字で、多くは「満室想定の年間家賃 ÷ 物件価格」で計算されます。費用や空室を引いていないため、収益還元法で使うNOIとは分子の中身が違います。両者を混同すると、同じ「利回り」という言葉でも意味がずれてしまいます。

表面利回りと還元利回り(キャップレート)の比較(参考)
観点表面利回り還元利回り(キャップレート)
主な使い方価格に対する家賃の大きさをざっくり見る純収益から価格を逆算して見る
分子満室想定の年間家賃年間の純収益(NOI・費用と空室を控除後)
費用・空室含めない差し引いた後で考える
数字の出方高く見えやすい表面より低く出るのが通常
位置づけ広告・初期スクリーニング向け収益還元法(鑑定評価の一手法)の考え方

使うときの注意——「この利回りが適正」とは言い切れない

収益還元法は価格を「一意に」決める魔法の式ではありません。NOIの前提(家賃・空室・費用の見積り)と、還元利回りの置き方の両方で結果は大きく動きます。特定の利回りを当てはめて出た価格を「適正価格」と断定することはできず、あくまで前提付きの試算・判断材料として捉えるのが実務的です。

融資の可否や担保評価では積算価格が重視されることもあり、収益還元だけで価格が決まるわけではありません。複数の観点(取引事例・積算・収益)を並べて幅で見る考え方については関連記事も参考にしてください。正式な評価が必要な場面(相続・調停・売買での客観的評価など)は、国家資格である不動産鑑定士による鑑定評価の領域です。税務上の評価や譲渡の計算は税理士へご確認ください。

まとめ

収益還元法は「年間の純収益(NOI)÷ 還元利回り」で価格をとらえる考え方で、NOIは満室想定ではなく費用・空室を引いた後の数字を使います。還元利回りはエリア・種別・築年・時期で変わり、一律の正解はありません。表面利回りとは分子の中身が違う点にも注意が要ります。

自分の物件の家賃・費用・残債を入れて手残りや価格感を具体的に確かめたい場合は、meyasu の物件カルテ「お金」ビューや AI 相談で、前提を置きながら整理できます(特定の売買を勧めるものではありません)。

  • 次に読む: 「収益物件の価格・査定はどう決まる?」(3つの観点で幅で見る)
  • 次に読む: 「売却価格の考え方」/「表面利回りと実質利回りは何が違うのか」

よくある質問

キャップレートと表面利回りは同じものですか?
同じではありません。表面利回りは多くの場合「満室想定の年間家賃 ÷ 価格」で、費用や空室を引いていません。還元利回り(キャップレート)は費用・空室を差し引いた後の純収益(NOI)を使い、収益還元法で価格を逆算するための利回りです。同じ「利回り」でも分子の中身が異なるため、比較の際は前提をそろえてください。数値はすべて参考値・試算です。
還元利回りは何%で計算すればよいですか?
一律の正解はありません。還元利回りはエリア・物件種別・築年・市場環境・時期によって変わります。市場水準の参考としては日本不動産研究所「不動産投資家調査」などの公表値がありますが、大型・機関投資家向けの調査で個別物件にそのまま当てはまるとは限らず、時期でも変動します。特定の値を「適正」と断定はできないため、幅で捉え、前提を明示して試算する考え方が一般的です。
NOI(純収益)には何を含めますか?
一般に、満室想定の家賃から空室・滞納の損失を引き、そこから運営費用(建物管理費・賃貸管理委託費・修繕引当・損害保険料・公租公課など)を差し引いた後の数字を使います。ローンの返済は物件の収益力を見る純収益には含めない考え方が一般的です。費用や空室を楽観的に置くとNOIが大きく出て価格も高く見えるため、前提の確認が大切です。
収益還元法で出た価格が「その物件の正しい価格」ですか?
収益還元法は価格をとらえる観点の一つで、前提の置き方で結果が動くため、一意の正解ではありません。実務では取引事例・積算・収益など複数の観点を並べて幅で見ます。相続・売買・調停などで客観的な評価が必要な場面は、国家資格である不動産鑑定士による鑑定評価の領域です。税務上の評価や譲渡の計算は税理士にご確認ください。
この記事は特定の売買・契約を勧めるものではありません。私たちの中立の約束をご覧ください。

出典: 国土交通省(不動産鑑定評価基準)日本不動産研究所(不動産投資家調査)

本記事は一般的な情報の提供であり、特定の物件・契約・投資判断の推奨や、税務・法務の助言ではありません。数値はすべて参考値・試算です。税務・契約・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家に、借入の可否は金融機関にご確認ください。

あわせて読みたい