売却にかかる費用の全体像——費目の把握
「いくらで売れるか」と同じくらい大切なのが「差し引き後にいくら残るか」です。売却でかかる費用を費目ごとに把握するための整理をします(税額計算はしません)。
結論:売却費用は「差し引き後にいくら残るか」を費目で見る
収益物件を売るときは、売却価格そのものとは別に、いくつかの費用が差し引かれます。「いくらで売れるか」だけでなく「諸費用と残債を引いた後に、手元にいくら残るか」を費目で押さえることが出発点です。
費用の額は物件の価格・種別・契約内容・金融機関によって変わり、一律に「◯円」「価格の◯%」と断定できるものではありません。この記事では、代表的な費目とその根拠(公的な決まりがあるもの・幅で見るもの)を中立に整理します。金額の目安を保証するものではなく、投資助言・税務助言でもありません。譲渡益にかかる税は費目として触れるにとどめ、税額の計算・判断は行いません(税務は税理士にご確認ください)。
主な費目の一覧(参考)
売却でかかりうる主な費目を、内容と根拠の観点で並べると次のとおりです(発生の有無・金額は物件と契約で変わります。いずれも参考としての整理です)。
| 費目 | 内容 | 根拠・目安の見方 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買の媒介を依頼した宅建業者への報酬 | 宅建業法で上限あり(速算式)。上限の範囲内で合意して決まる |
| 印紙税 | 売買契約書に貼る印紙 | 契約金額の区分で決まる。軽減措置あり(国税庁) |
| 抵当権抹消費用 | ローン完済に伴う抵当権の抹消登記 | 登録免許税は不動産1個につき1,000円+司法書士報酬(依頼時) |
| 繰上(一括)返済手数料 | 売却代金で残債を一括返済する際の手数料 | 金融機関・商品・返済方法で異なる(無い場合も) |
| 測量・境界確定費用 | 土地の境界確定などが必要な場合 | 必要時のみ。面積・隣地調整で幅が大きい |
| その他 | 解体・残置物撤去・ハウスクリーニング・引越し等 | 物件・売り方による |
| (譲渡益への税) | 売却益に対する税 | 費目としては存在。計算・判断は税理士へ(本記事では扱わない) |
仲介手数料:宅建業法の「上限」と速算式
売買の媒介を宅建業者に依頼した場合の報酬(仲介手数料)は、宅地建物取引業法(第46条)に基づき国土交通大臣の告示で「上限」が定められています。取引額の区分ごとに、200万円以下の部分は取引額の5%、200万円超400万円以下の部分は4%、400万円超の部分は3%(いずれも税抜)とし、これに消費税(現行10%)を加えた額が上限です。
取引額が400万円を超える場合は、区分ごとの計算をまとめて「取引額×3%+6万円」に消費税を加えた額として求める速算式が広く使われます。ここで重要なのは、これはあくまで「上限」であって、実際の額はこの範囲内で依頼者と宅建業者が合意して決まる点です。媒介契約の締結前に、上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し合意することが求められています(国交省の解釈・運用の考え方)。
なお2024年7月施行の改正で、いわゆる低廉な空家等(売買金額800万円以下)については、現地調査費用等を勘案し、媒介報酬の上限が「30万円+消費税」まで受領できるよう引き上げられました。上限は法令で定まりますが、実額は交渉・契約によります。
印紙税:売買契約書にかかる
不動産の売買契約書には印紙税がかかり、税額は契約金額の区分で決まります。租税特別措置法により、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産譲渡契約書には軽減措置が適用されます。軽減後の税額は、たとえば契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円、5,000万円超1億円以下で3万円などとされています(いずれも軽減後の額)。
軽減措置の適用期間や税額は税制改正で変わり得るため、契約の時点で最新の税額をご確認ください。
抵当権抹消費用:ローン完済に伴う登記
融資を受けて購入した物件を売る場合、売却(完済)に伴って設定されている抵当権を抹消する登記が必要になるのが一般的です。この登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。土地と建物はそれぞれ1個と数えるため、土地1・建物1なら2,000円が目安になります(同一の申請で不動産が20個を超える場合は、申請1件につき2万円が上限とされます)。
登記を司法書士に依頼する場合は、これに司法書士の報酬が加わります(報酬額は事務所により異なります)。登記手続きや費用の詳細は司法書士・法務局にご確認ください。
繰上(一括)返済手数料:金融機関による
売却代金で残っているローンを一括返済する場合、金融機関によっては繰上(一括)返済手数料がかかることがあります。金額や有無は、金融機関・商品・返済方法(変動/固定、窓口/インターネット手続き)などによって異なり、固定金利期間中の一括返済で手数料が高くなる例もあるとされます。
一律に「かかる/かからない」とは言えないため、売却を検討する段階で返済予定表や金融機関で条件を確認しておくと、手残りの見込みが立てやすくなります(断定はできません)。
測量・境界確定、その他の費用(必要な場合)
土地を含む売却では、境界が未確定の場合に測量・境界確定(確定測量)を求められることがあり、費用は面積や隣地との調整の状況で大きく変わります。このほか、状況によっては建物の解体・残置物の撤去・ハウスクリーニング・引越しなどの費用が生じることもあります。
いずれも必要な場合にのみ発生する費用で、物件の状態や売り方によって有無・金額が変わります。見積りは物件ごとに確認するのが実務的です。
譲渡益への税は「費目」として触れるのみ
売却益(譲渡所得)に対する税は、費目としては存在します。ただし税額は、保有期間・取得費・各種の特例など、個々の状況によって大きく変わります。本サービスは税額の計算・税務の判断を行いません。譲渡益への課税の扱いは税理士にご確認ください(本記事では計算しません)。
手元にいくら残るかで見る
売却で手元に残る額は、おおまかに「売却価格 −(残債の一括返済)−(上記の諸費用)」で捉えられます。価格の見え方と、実際に残る額は別ものです。費目を控えめ(多め)に見積もっておくと、「思ったより残らなかった」というズレを防ぎやすくなります。
自分の物件の残債は返済予定表やアプリの「お金」ビューで確認でき、売却と保有継続の手残りを具体的に見比べたいときはAI相談で整理することもできます(いずれも参考値・試算としての表示です)。
まとめ
売却費用は「価格の何%」と一律に決めず、費目ごとに把握するのが実務的です。仲介手数料は宅建業法で定まる上限(速算式)の範囲内で合意して決まり、印紙税・抵当権抹消費用は費目として整理でき、譲渡益への税は税理士に確認します。最後は差し引き後に残る額で見るのがポイントです。
- 次に読む: 「収益物件を売るとき、価格の目安をどう考えるか」(価格の見方)
- 次に読む: 「収益物件売却の流れと必要書類」(手続きの全体像)
- 次に読む: 「売却の仲介会社の選び方」(媒介契約と注意点)
よくある質問
- 売却の諸費用は全部でどのくらいかかりますか?
- 一律に「価格の◯%」とは言えません。仲介手数料・印紙税・抵当権抹消費用・繰上返済手数料・測量費用などの費目ごとに、物件と契約に応じて発生します。まずは費目を洗い出し、それぞれを控えめ(多め)に見積もって差し引き後の手残りを確認する考え方が実務的です(金額を保証するものではありません)。
- 仲介手数料の上限はいくらですか?
- 売買の媒介では宅地建物取引業法に基づき国交省告示で上限が定められています。取引額が400万円を超える場合は「取引額×3%+6万円」に消費税を加えた額が上限として広く使われます(200万円以下の部分は5%、200万円超400万円以下は4%、400万円超は3%=いずれも税抜、これに消費税)。あくまで上限であり、実際の額はこの範囲内で宅建業者と合意して決まります。詳細は宅地建物取引士にご確認ください。
- 売却でかかる税金にはどんなものがありますか?
- 契約書にかかる印紙税や、抵当権抹消登記の登録免許税(不動産1個につき1,000円)は費目として整理できます。一方、売却益(譲渡所得)にかかる税は保有期間や取得費・特例などで大きく変わり、本記事では計算しません。譲渡益への課税の扱いは税理士にご確認ください。
- 抵当権の抹消は自分でできますか?
- 抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円で、ご自身で申請することも、司法書士に依頼することもできます(依頼する場合は別途報酬がかかります)。手続きの可否や必要書類は個々の状況で異なるため、法務局や司法書士にご確認ください。本記事は費目の把握を目的とした一般的な情報です。
出典: 国土交通省(宅地建物取引業者の報酬告示)、国税庁(印紙税の軽減措置)、法務局(抵当権抹消登記)
本記事は一般的な情報の提供であり、特定の物件・契約・投資判断の推奨や、税務・法務の助言ではありません。数値はすべて参考値・試算です。税務・契約・法務の判断は税理士・弁護士等の専門家に、借入の可否は金融機関にご確認ください。